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[orca-users:00420] Re: 日医の後方支援策



  長島先生、皆様、こんにちは。
  安陪隆明@鳥取県鳥取市、安陪内科医院です。
  今晩、愛知に妻子を残して鳥取に帰って来ました。
ここ3日間は鳥取に単身赴任(?)です(^^;)

> 私の説明が舌足らずだったでしょうか。私は、「自由競争」
>で、市場に任せてたところ、「結果として」、価格も質も良く
>ならなかった典型的な例として、「既存のメーカー製レセコン」
>を上げたのですが。

  いえ、この部分こそ、私と長島先生の認識が最も異なる、
本質的な部分だと思いますよ。

  長島先生は、

「既存のメーカー製レセコンは自由競争をしている」
                      ↓
「既存のメーカー製レセコンは価格も質も良くなっていない」
                      ↓
「よって、自由競争をしても価格も質も良くなるとは言えない」

  と考えておられます。それに対して、私は、

「既存のメーカー製レセコンは真の自由競争をしていない」
                      ↓
「既存のメーカー製レセコンは割高感が強い」
                      ↓
「よって、真の自由競争市場を構築すべきである」

  と考えています。ここが本質的な違いです。

  まず普通の「物」の産業における「自由競争の原理」を
そのまま「ソフトウェア産業」に当てはめるところが
間違っているかと思います。
  一つの例を出しましょう。
  例えば毎日飲んでる牛乳が、「1ヶ月後には今まで1本300円
だったのを1本3千円に値上げします」と言ってきたらどうさ
れるでしょうか? 相当美味しい牛乳でも、たいていの方は
「そんな高いのをやめて、安い牛乳に変えるよ」という行為を
取られると思います。
  それでは、毎日使っているWindows OSについてマイクロソフト
社が、「今のWindowsは1ヶ月後には使えなくなります。1ヶ月後
にはパソコン1台につき年間使用料30万円でお願いします」と
言ってきたら、どれだけの人が他のOSに切替え可能でしょうか?
  切替えたくても、動かしているソフトウェアの関係で、結局
切替えられない人が続出し、結果的に30万円を払ってでも…
という人や組織が半分以上占めるのではないでしょうか。

「真の自由競争」というものが成り立つためには、
「取り換え可能なものが、消費者にとって自由に選択できる」
  という条件が成り立つことが必要です。
  A社の牛乳を買いたくないと思ったら、B社の牛乳を買って
飲むことができる…というのが、それです。
  しかしソフトウェアは簡単に「取り換え可能」なものでしょ
うか? 例えば電子メールソフトは「取り換え可能」です。
しかし、Microsoft Wordなどは「取り換え可能」ではありま
せん。Windowsも「取り換え可能」ではありません。
  電子メールソフトにはPOPとかSMTPとかいったcommoditizing 
protocols(共有化されたプロトコル)が存在しています。それが
故に、電子メールソフトは「取り換え可能」です。
  しかし、Microsoft WordやWindowsにはcommoditizing 
protocols(共有化されたプロトコル)はありません。そのために
「取り換え可能」になっていません。

>また、私は、今回のやりとりの一番最初の発言で、既存レセ
>コンに対し、「データを、CSVファイルなどでFDやMOに
>出力できるようにする(廉価で)」をユーザー一団となって
>要望するべし、と冒頭に書いています。

  この要望を聞き入れてもらえる現実があるとお思いでしょう
か?
  ソフトウェア産業で最もシェアを握って大金持ちになった
マイクロソフト社がどういうことを考えて、何をしてきたかの
実例を出しましょう。
http://www.post1.com/home/hiyori13/freeware/halloween.html
  にて、マイクロソフト社はLinux等が出て来た今後のサーバ分野
等に対して、de-commoditizing protocols(脱共有化されたプロト
コル)戦略を取るように提案しています。
  実はこのマイクロソフト社のde-commoditizing protocols(脱共
有化されたプロトコル)戦略には実際の前例があります。
  マイクロソフト社の基礎を作ったOSと言えば、言わずと知れた
MS-DOSですが、そのMS-DOSと互換性のあるDR-DOSをデジタルリサー
チ社が作ったときに、マイクロソフト社の対抗策は、
「MS-DOSからMS-Windowsへ土俵を移す」
ことでした。そしてさらにその地固めとして、DOSと切り離すこと
を不可能にしたWindows95を出しました。「取り換え可能」になら
ないように「規格」を変えた。つまり「プロトコルを拡張して新し
いプロトコルを開発」し、そしてDR-DOSの市場参入を防止したの
です。そしてマイクロソフト社はこういったことを今後も何度も
延々と繰り返すでしょう。何故なら、「プロトコルを拡張して
新しいプロトコルを開発」するのをやめた時、互換性を持った
他社商品に利益を捕られてしまうからです。

  別に私は「だからマイクロソフトは悪い」と言っている訳では
ありません。私がビル・ゲイツの立場にたったら、やっぱり同じ
ことをしているような気がします。結局、こういうことを繰り返
して利益を得ることを考えて行かないといけないところが、
commoditizing protocols(共有化されたプロトコル)がない
ソフトウェア分野の業とでもいうべきものです。

  そして、commoditizing protocols(共有化されたプロトコル)が
ないレセコン分野もしかりです。
  例えば、電子カルテとレセコンを結びつける規約としてCLAIM
がありますが、いったい今までCLAIMにまともに取り組もうとした
レセコンメーカーが何社あったでしょうか??

  長島先生は「物」の産業における「自由競争の原理」を
無条件にそのまま「ソフトウェア産業」にあてはめておられ
ますが、それは間違いかと思います。ソフトウェア産業に
おいて「自由競争の原理」を論じるためには、それまでの
「物」の産業にはなかったcommoditizing protocols(共有化
されたプロトコル)という概念を導入した上で論じなければ、
「真の自由競争とは何か」「ソフトウェア産業において、
アダム・スミスの神の見えざる手が成り立つ条件は何か」
ということを見落とされるかと思います。

  まあ長々と話をしてしまいましたが、結局、生越氏が仰る
ように、

>  あーゆーのを「自由競争」と言うのは、篭の鳥は篭の中で
>自由にしていると言うのと同じ。確かに縛られてるわけでも
>鎖でつながれているわけでもないですから、自由には違いは
>ない。

  という例え話が一番わかりやすいかもしれませんね。

> 今回のやりとりで明らかになったのですが、ORCAは、「個人でインストールし
>て使う方式」は、原則として想定されていません。業者が、導入・保守・管理す
>るのが、原則です。つまり、ORCAユーザーは、今まで、既存のメーカ製レセコン
>を購入していたのと全く同じ形式で、ORCAシステムを業者から「購入」すること
>になります。

  はい、私は最初からそういう世界を想定していました。

> 実は、今回のやりとりを通じて、ORCAが、ほぼ全てのユーザーにとって、
>インストールや管理を、全て業者任せにしなくてはいけないものである、即ち、
>ユーザーにとっては、完全な「ブラックボックス」になってしまうことが明らか
>になったのではないでしょうか。従って、
>
>> 「囲い込み」から、レセコンを使う医療機関を開放することを
>> 狙ったためである
>
> このままでは、ORCAも、一種の「囲い込み」になってしまうのではないでしょ
>うか。

「インストールやメンテナンスを一般ユーザーが行うが困難」
ということを「ブラックボックス」と呼ぶのか?? というところ
で、私も山田先生と同様の疑問を感じたのですが、まあこのこと
に拘っていては先に進めないので、話を進めますが、長島先生が
仰る意味での「ブラックボックス」であっても良いと私は思って
います。
  何故なら、いくらインストールや取扱が簡単になっても、結局
それで救われるのは「一割にも満たないであろうパワーユーザー」
であって、「どうしても使わないといけない時以外は、なるべく
パソコンなどに触りたくもない」という九割の「普通の会員」は
救えないからです。

  それではORCAは業者に頼るから「囲い込み」なのか、というと
そうではありません。会員にとってはORCAは、長島先生が仰る
意味での「ブラックボックス」かもしれませんが、しかし、
「業者を選択する自由」が生じるところが違いになります。
「あの業者はあまり面倒をみてくれないが安い」
「あの業者が高いが、ちょっとしたことでもすぐに来てくれる」
といった具合にです。
  もちろん「選択できる程、メンテナンス業者が育っていないで
はないか」というのは確かで、これこそが現在のORCAで最も力を
入れないといけないところですが、理想とする将来像はそういう
ものだと思います。

> 確かに、その次は、そうなるんでしょうけど、
> 今は協力業者の体力を、作ってあげないと。
> と思うのですけど。

  私も黒川先生と同様に思います。例えば、(私は日本医師会の
役員でもなければ、日医総研の人間でもないので、勝手なことが
言えますが) 一都道府県につき2件の業者までに限り、無利子無
担保で1件あたり100万円の融資をするとかいった融資事業をして、
業者を育成していかなければいけないのではないかと思ったりし
ています。

>ORCAはこれからの医療環境のIT化で絶対に必要な、「共通フォー
>マットの提供」という大きな使命を持っているはずです。ORCAが
>成熟すれば、proprietaryなフォーマットを武器にユーザーを囲
>い込んできたレセコンベンダーは結果的に戦略の再考を余儀なく
>されるでしょう。
>インストールが難しいからWindowsに移植すればとか、安価でなけ
>れば意味がない(それは安いに越した事はありませんが)という
>のは少し短絡的に聞こえます。あえてオープンソースにし、まだ
>一般には敷居の高いLinuxをplatformに選んだ意味をよく考える
>必要があるように思います。

  雨宮先生、ありがとうございます。
  私の訴えたいところはまさにそこです。

>ちょっとこのスレッドのtopicから外れるかも知れないのですが
>「囲い込み」についての私の話をします。昔話をひとつだけ。
                        :
                        :
>あのときの、ほとんど憤りにも似た感情が、いま私をこのプロジェクトORCAに
>向かわせている原動力であるように思います。
>
>ユーザーはもっと知識を持たなければいけません。
>良い製品と、良い業者をみきわめる目を養うことが涵養です。

  有家先生のお話を伺って、やはり大同小異のことはあちこちで
あるのだと、思いました。この状況を何とかしなくてはなりませんね。

      安陪隆明
      鳥取県鳥取市
      安陪内科医院